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ネットの誹謗中傷を発見したらどう対処すればよいか(3) ~裁判所を活用した証拠保全の方法~


証拠を残しておく重要性

違法な誹謗中傷を伴う書き込みのあったネット事件では、証拠の保全を急ぐことが大変重要になります。なぜなら、一般的に通信事業者のアクセスログの保存期間が3ヶ月~半年であるため、誰が書き込んだのか(発信者情報開示といいます)突き止める過程で、ログ記録が消去されてしまう場合があるからです。

また、書き込まれた情報を、書き込んだ本人自らが消去するということも考えられます。また警察に被害届を出しても受理されるまでに時間がかかり、同様に証拠が消える可能性少なくありません。

そのために、まずやらなければならないことは、証拠を保全することです。刑事事件でなく、民事での損害賠償請求をする際には、誰が書き込んだのか突き止めなければなりません。

仮処分申請のタイミング

SNSやブログ、掲示板などの運営会社に対して、緊急の対処として掲載記事削除の仮処分を求めることが有効です。本人でも手続きは可能ですが、できればネットに詳しい弁護士を通じて行うと間違いないでしょう。

こうした仮処分申請のタイミングとしては、3点で見ていく必要があります。


①侵害情報発信者と交渉しているけれども、なかなか埒があかず、このまま侵害情報の発信を放置していては今後も大きな被害・ダメージが予想される場合

②マスコミなどに取り上げられるようになり、より多くの人の目に晒されるようになってきたとき

③サイト掲示板管理者の所在が分からず、対応に苦慮しているとき

仮処分申請の有効性

裁判の最終的な判決を待っていたのでは、相当な期間、その問題部分が据え置かれてしまいます。そうした権利の侵害状態が長期間続くことになれば、企業であれば信用失墜にもつながりかねず、経営危機の要因にもなりかねません。 

そこで、民事では仮処分制度という相手方に対して取りあえず暫定的な措置を求める被害者救済制度が設けられているのです。緊急を要することへの制度利用のため、手続きも通常の訴訟に比べて簡略化されているのが特色です。裁判所の命令も数日間で出るケースが多いです。

仮処分の種類

仮処分には「係争物に関する仮処分」と「仮の地位を定める仮処分」があります。

「係争物に関する仮処分」とは、物品や土地に関することですが、ネットでの誹謗中傷やプライバシーの侵害に対する仮処分のようなケースでは、後者の「仮の地位を定める仮処分」という分類になります。

具体的には、サイト・掲示板への掲載禁止の仮処分のほか、営業妨害禁止の仮処分などがあります。現状を維持するのではなく、変更する方向で急迫した危険損害を避けようとする点が「係争物に関する仮処分」とは違う点です。

仮処分の申請時の注意点

仮処分の申請は、のちのちの損害賠償及び差止請求の提訴を前提として、現時点で直ちに侵害情報の削除が実現できる有効な手段であるといえるでしょう。

しかしその反面、裁判で権利侵害の有無を判断する前に対処するため、相手がこのことによって不利益を被ったときのために、多額の保証金を裁判所から要求される可能性があります。

近年では、名誉毀損に該当する文言の削除を再三要請したにもかかわらず削除されなかったため、ネット掲示板管理者に対して削除を求める仮処分を申請して認められた事例や、民事訴訟を提起して認められた事例が増えています。

仮処分では、債権者(申立者)の申請が通れば、裁判所から仮処分命令が出されますが、しかしその命令主文があいまいな内容であると、のちに債務者の抜け道をつくることになりかねません。ですから、命令主文の内容については、裁判所へしっかりと要望を伝える必要があります。

たとえば、「○○は△△掲示板に書き込みをしてはならない」という命令より、「どんなSNSやブログ、掲示板などを介しても同種の書き込みをしてはならない」という旨の命令文にしてもらう方が現実的でしょう。

また同様に、発信者においても、当該侵害情報発信者を指定するより、他の第三者を介しても同様の書き込みをしてはならない旨の命令文としておくことが有効かもしれません。


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