書き込んだ本人の開示請求は、ハードルが高い
SNSやブログ、掲示板に誹謗中傷を書き込んだ本人の個人情報を開示させるのは、ハードルが結構高いのが現実です。例えば2ちゃんねるに爆破予告や殺人予告など書き込んだ人間が、数日の間に逮捕されるニュースはよく知られていますが、これは特殊なケースです。尖閣ビデオが流出した事件で、警察庁が神戸のインターネットカフェから書き込まれていた情報を入手した事件がありました。しかしこれは捜査機関の強制力でユーチューブにIPアドレスを開示させたことで、場所を特定しました。
ところが、誹謗中傷のような事件では、SNSやブログ、掲示板管理者(サービスプロバイダー)は、書き込んだ人間の情報をすぐ差し出すなどということはしません。通信の秘密に触れるからです。通信の秘密を守ることは、電気通信事業法で事業者に課せられた義務なのです。
誹謗中傷を書き込んだ本人を特定する方法と書式
書き込んだ人間の情報の開示依頼を「発信者情報開示請求」といいます。これは削除のときと同じ「プロバイダ責任制限法」に則って手続きが行われます。ただ先の削除要求とは違って、発信者情報を開示するというのは、サービスプロバイダーにとって一層ハードルが高いものになりますが、要件を満たせば対応してくれる場合もあります。法律で認められていますので、行使することは個人の権利です。
詳しくは、こちらに申請の方法、書式がありますので、参考にして下さい。
発信者情報開示請求標準書式
http://www.isplaw.jp/d_form.pdf
発信者情報開示請求でわかるのは、たいていの場合、IPアドレスです。IPアドレスとは、インターネットに書き込む時に記録される発信者番号のようなもので、匿名での書き込みサイトや掲示板の場合であっても、ログ(記録)を取ってあれば、IPアドレスだけは分かるようになっています。
発信者の情報開示に必要な要件とは何か
この法律による情報開示の請求で、求められる要件は「権利侵害が明確であること」です。ここでいう権利侵害が明確であるとは、被害者がそれを証明するために、第一に侵害情報(違法な情報)の内容自体を提示することであり、第二に侵害された権利とその理由を示すことです。
具体的な作業としては、中傷された箇所の全頁をコピーして、問題の中傷部分を見せること、どの内容がどんな権利を侵しているのかを説明することです。このとき、忘れてならないのは、URLの記載です。
証拠は、プリントしたものでもよいし、書き込み箇所の全部をまるごとコピーできるソフトがあるのでそれを利用してもよいです。データはCD-ROMなどに保存して、全頁コピーした紙と併せて持っておきましょう。
また「正当な理由」とは、損害賠償請求、差し止め請求、謝罪広告掲載など、名誉回復措置の請求のために必要な理由のことです。
なお、情報開示の内容について、総務省令では、情報開示の対象項目として五つ挙げられています。
(2)発信者その他侵害情報の送信に係る者の住所
(3)発信者の電子メールアドレス
(4)侵害情報に係るIPアドレス
(5)前号のIPアドレスを割り当てられた電気通信設備から、開示関係役務提供者の用いる特定電気通信設備に侵害情報が送信された年月日及び時刻
一口アドバイス:面接の様子を掲示板に書き込んで問題に
学生時代に就活で受けた会社面接の様子を書き込んだことから、当時の会社から発信者情報開示請求を受けた事例があります。「みんなの就職活動」という掲示板に、少し批判めいた内容を書き込んだことが発端で、ある日突然「発信者情報開示請求に関する照会につきまして」というメールが彼女の元へ届きます。
内容は、住所、氏名、名前の開示を相手会社が求めていて、同意するか拒否するか返信しろという内容で、個人情報の使用目的は「損害賠償請求のため」と記載がありました。
そのことでヤフー知恵袋に「どうすればいいか、助けてほしい」という投稿が寄せられました。本人は面接官から言われたことがショックで、書き込んだ内容は暴言・誹謗中傷の類ではなかったと主張しましたが、会社側はそう受け取らなかったようです。
このようにネットの書き込みでは、十分注意することが必要です。
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