誹謗中傷被害にあったら何をすればいいのか
ネット上に書き込まれた個人への誹謗中傷や、会社への信用棄損、業務妨害に対して、被害者はどのように対処すればよいでしょうか。
それにはまずどのような書き込みが犯罪となるのか知る必要があります。次に発見したとき、書き込まれた内容に対し、どのような態度で臨むかも考えねばなりません。戦うならば、どういう手続きで進めていけばいいのかも理解しておく必要があります。場合によっては何もしない、無視するといった対応の方がよい場合もあります。
この数年、ネット上の誹謗中傷や風評被害に対して、相談に乗ったり対策を商売にする業者が一気に増えました。多くは企業向けですが、それだけ困っている会社が増えているわけです。ただ、なかには法外な料金を請求したり、知識がないことを逆手にとって、ぼったくりに近い商売をしている業者も少なくありません。
「ネットの書き込みの該当箇所を見つけます」「逆SEO対策で、ネガティブな書き込み順位を下げます」との触れ込みでビジネスをしているのですが、何でこんなに高いのかと思うような料金システムになっています。なかには違法な非弁活動(弁護士の資格を持たない者が弁護士業務を行うこと)に近いこともやっていて問題が多いのも事実です。
誹謗中傷や風評被害にあったら、自分でできることは何があるのか、自らよく研究し知識を得てから、専門家に相談することをお勧めします。
ネットの誹謗中傷に対する基本的な対処法
誹謗中傷を書き込まれた場合、多くの人(法人)は混乱し過剰対応しがちです。
まず、その書き込みがどの程度の影響を及ぼしているか、冷静になって考えてみることが大事です。感情が先に立ち、「名誉棄損で訴えてやる」「許せん、書いた奴を探し出して、損害賠償を請求する」と、考えがちです。しかし第三者が書き込まれた問題部分を読んでも、それほど大したこともなく、ただ問題のあるクチコミとして投稿されているだけだったりします。仮に影響が深刻で戦うにしても、掲示板管理者やプロバイダーに対して、こういう戦闘モードで対面しても、決してよい結果を生みません。内容によっては、無視することが最良の結果を生む場合もあります。
それでは、誹謗・中傷や悪評などの書き込みを発見した場合は、どのように対応したらよいでしょうか?
この点については、そのネット上で発信されている情報の内容にもよりますが、基本的には次に掲げた6つの対応方法が考えられます。
(2)ネット上で情報の誤りを指摘する
(3)サイト・掲示板管理者に、書き込まれた問題部分の削除を要求する
(4)サイト・掲示板管理者に、書き込んだ人間の個人情報開示を要求する
(5)警察に相談する
(6)訴訟を起こす(民事、刑事)
(1)無視する
「無視する」のがよいケースは、書き込みに具体性がなく、実害が予想できない単なる愚痴のような場合です。
また社会的にある程度知名度があり、ネット上の風評について何を書かれても影響がそれほど及ばない大会社などは、相当ひどい書き込みであっても無視でよい場合もあります。
(2)ネット上で情報の誤りを指摘
「ネット上で情報の誤りを指摘」するのはよくしがちなのですが、絶対にしてはいけません。
ネットは議論する場ではなく、煽り、騙りの場であり、匿名で誹謗中傷するような相手と実名で向かい合うことはそもそも形勢が不利であり、かえって火に油を注ぐことになりがちです。
(3)サイト・掲示板管理者に、書き込まれた問題部分の削除を要求する
「削除要求」は、訴訟までは考えていないが、権利侵害を受けている事実を明示して、とにかく削除だけしてもらえればそれでよいと考える場合です。
連絡窓口があり、投稿のポリシーも明示されているような事業者が管理するSNS、クチコミサイト、掲示板では、正式な手続きを踏んで申請すれば何らかの対応してくれます。
ただし、それぞれ独自の削除基準を設けているため、その基準に合致しているかどうかで判断され、削除要求が通らない場合もあります。
注意が必要なのは、書き込まれた場所が2ちゃんねるの場合です。削除要求すると削除板に掲載されるため、かえって耳目を集めて炎上し、問題を大きくする場合があります。
2ちゃんねるに書き込まれたら、削除申請はしないほうが賢明です。
(4)サイト・掲示板管理者に、書き込んだ人間の個人情報開示を要求する
「書きこんだ人間の情報開示」の要求は、正式には「発信者情報開示請求」といい、書き込んだ人間が匿名の場合に行います。
一般的にネットでは、実名制のSNSでない限り匿名やハンドルネームでの書き込みが一般的です。
以下の(5)警察に相談する場合、(6)訴訟する場合においても、必要となる手続きです。
民事訴訟の場合は、相手の氏名・住所が分からないと訴えることができないため必須となります。
刑事訴訟の場合は、被疑者不詳でも刑事告訴が可能なため不要ですが、実際には警察が捜査に着手する際に必要な材料となるため、結局は必要となる点で同じです。
手続きの流れですが、請求を受けたプロバイダーや掲示板管理者は、情報発信者に問い合わせて、開示の可否を判断することになります。
法律で通信の秘密が事業者に課せられているため、警察の強制捜査でもない限り、一般的には勝手に事業者が個人情報を手渡すことはありませんので、そのことは覚えておきましょう。
(5)警察に相談する
「警察に相談」するのは、被害を受けた本人(法人)が最も取り組みやすい方法です。
ただし何の戦略もなく単に相談で行くと、生活安全課にまわされて、話を聞いてもらうだけに終わります。
明確に刑事事件として告訴したい、という意思を持って刑事課に行く必要があります。もしサイバー犯罪の部署があればそこに行きましょう。
もちろんその際は、警察に捜査してもらうための客観的な証拠や資料を持参する必要があります。
多くの人が陥りがちなのは、資料も準備せずただ話しを聞いてもらいに相談に行くことです。
これでは全く相手にされないで帰ってくることになります。
(6)訴訟を起こす(民事、刑事)
「訴訟を起こす」は、被害が深刻でかつ放置できないと判断した場合に、最も有効な手段です。
情報発信開示請求や削除要求に対し、2ちゃんねるなど無視して取り合わない掲示板管理者がいます。
こうした態度を取る相手に対しては、訴訟を前提にした戦術で臨まないと、強い説得力も強制力も持ち得ません。
訴える場合、刑事訴訟と民事訴訟があります。ただ注意しなければならないのは、書き込まれた内容が誹謗中傷ではなく、正当なクレームだったり、ネット告発の場合には、逆効果になることがあります。
東芝クレーマー事件(東芝ユーザーサポート問題)
東芝製ビデオデッキ購入者が、同社の製品サポート窓口の社員の暴言を録音して、ホームページで公開した事件が1999年にありました。
同社がホームページ掲載禁止の仮処分を裁判所に申請したことに対して、2ちゃんねるを中心に世論からの猛烈な反発が起きて、申請を取り下げました。
訴訟の場合においても、ネット事件の場合は進め方に注意が必要になります
ネット誹謗中傷の対処方法まとめ
誹謗中傷や、法人で業務妨害を受けた場合に、まず最初にやらなければならないのは、書き込みの問題箇所の抽出と分析です。
つまり違法性があるかないか、書き込みが犯罪になるかどうか、その点をよく見極めることが大切になります。
また書き込みにはいろいろなタイプがあります。クチコミなのか、誹謗中傷なのか、それともクレームなのか、内部告発なのか、文面だけ見てもよく分からないことが多いのも事実です。
このあたりの分析については、どう対処するか方針が決まった段階で、ITに詳しい弁護士と相談するのがよいでしょう。実際には前後の文脈も読み取りながら、違法性があるのかないのか判断することになります。
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