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フェムバタイジング

Feminine Female Grace Floral Frame

フェムバタイジングとは


「フェムバタイジング」とは?

アメリカで「Feminisim」と「Advertising(広告)」を合わせた造語としてごく最近登場した言葉です。

フェミニズムとは

フェミニズム(英: feminism、中: 女性主義)とは、性差別を廃止し、抑圧されていた女性の権利を拡張しようとする思想・運動、性差別に反対し女性の解放を主張する思想・運動などの総称。男女同権運動との関わりが深い。リベラル・フェミニズムやラディカル・フェミニズムなど、フェミニズムの思想は多様であり、一本の思想と考えることはできない。対置概念はマスキュリズム。
フェミニズムを主張する人のことをフェミニストと呼ぶ。

Wikipediaより引用

平たく言うと、女性が社会的に活躍することを応援するような内容がテーマとなっている広告のことです。

わかりやすく実例をご紹介しましょう。

P&Gの生理用品ブランド「Always」の広告

こちらは『カンヌライオンズ』のグランプリにも輝いた広告です。

簡単に内容を説明すると、動画の冒頭で大人の女性や男性は「女の子みたいに走って」など様々な動作を要求されます。
すると、誰もが(おそらく普段はしないのに)わざとくねくねとした女性らしい曲線を意識した動きをしてしまいます。
しかし当の「女の子」たちは、(おそらくいつもしているであろう)全力で速く走る動作をしたり、全力で遠くにボールを投げる動作をするのです。

この広告は、ちょうど生理用品を使う思春期の頃から、女性が「女であること」に「自信がある状態」から「自信がない状態」に変わってしまう社会通念があることを気づかせるとともに、「自分らしく自信を持ってもらうきっかけとなるように、私たちはこの商品で女性を応援しています」というブランドのメッセージを表現したものでした。

ハリウッドで活躍中の女優エマ・ワトソンが国連でフェミニズムについて語るなど、女性が社会で活躍するための問題について関心が高くなっているのは日本だけではありません。
そのような影響も受け、アメリカでは上記のように社会的に意義のあるメッセージを送るとともに、サービスや商品、ブランドの宣伝を巧みに宣伝する手法が徐々に目立ってきているそうです。

もちろん、フェミニズムを笠に着て金儲けをしようとするのはけしからんという批判もありますが、テレビやスマホ、街中や電車の中で毎日ふれる広告には、人々の心に多大な影響を与えることはまちがいありません。
であれば、できればポジティブなメッセージを社会に発信していくことが、回り回って自社のブランド価値も高めることにつながるのだという考えなのでしょう。

日本ではなぜ広告が燃え続けるのか

一方で、日本はどうでしょうか。

日本では2017年現在、広告が炎上することが非常に多いです。

化粧品メーカーが「今日からあんたは女の子じゃない」と20代の女性に言い放つCMを公開中止に追い込まれたり、自信がなさそうな女性に対して男性が別の女性と比較した上で「君と(彼女とで)は需要が違うんだから」と嘲笑する表現をした百貨店も嫌われ、スクール水着姿の少女が男性に「養って」と媚びるような演出でふるさと納税のうなぎをPRしようとした自治体にも批判が殺到しました。

これらが炎上した原因は、「見る人(女性)を傷つけてしまう表現かもしれない」という想像力が欠如していたことも大きな要因の1つと思ってまちがいありません。
前半2つのCMは、「男に媚びるために化粧をしておしゃれをしろというのか」と多くの女性たちの怒りを買いました。
これはP&Gの広告が絶賛された事実を踏まえると海外ではあり得ない表現でしょう。

制作サイドは、ブランドのメイン顧客である女性に嫌われるような広告をつくるべきではありませんでした。
他にもワンオペ育児を助長すると物議を醸したおむつのCMや、男性のビジネスパーソン向けに現役女子大生が飛行機で隣の座席に座るというキャンペーンも炎上しました。
女性をテーマにしたCMで炎上した例は枚挙に暇がありません。
日本の広告業界は、残念ながらフェムバタイジングがどうのと語る以前の問題で躓いているように見えます。

炎上リスクと集客効果

また、昨今燃えやすくなっているタイプのCMは「とにかく話題になってほしい!」という気持ちで作られたものです。
公開に至るプロセスの中で、きっと「女性蔑視であると批判されるかもしれないから、やっぱりこの内容はまずいのではないか」というブレーキを外してしまう原因となることが多くあります。

今は、さほど世の中に知られていなかった商品がインターネットの口コミで話題になり爆発的に売れるようになったり、飲食店に行列ができるなど、事業者からすると魅力的なシンデレラストーリーも数多く存在します。
とりわけ口コミを生みやすいSNSは、事業者のPR目的であっても無料で参加できることが多く、少ない費用で始められる点はとても魅力的です。
SNSに力を入れることは決して悪いことではありません。

しかし、SNSやインターネット広告を運用するにあたり、「どのくらいのユーザーに閲覧されたか」「クリックされているか」「どれだけ話題になっているか」などの効果を様々な数値で測れるようになってきた分、数値を追うことにフォーカスしてしまっていないかどうか、時には立ち止まるべきでしょう。

観光PRのための動画を公開したところ「アダルトビデオのようで、観光PRのCMとして不適切だ」として猛烈に批判を浴びた県の知事は、下記のように述べたといいます。

「可もなく不可もなくというようなものは関心を呼ばない。リスクを負っても皆さんに見ていただくものを、と思った」「どんどん厳しいことを言って、(動画への)アクセス数を増やしていただきたい」。
県観光課の担当者も「『表現が刺激的すぎる』などの批判も多く寄せられていますが、話題となったことで、多くの方に見ていただいているとプラスに受け止めている」

注目すべきは、「リスクを負っても皆さんに見ていただくものを、と思った」「アクセス数を増やしていただきたい」の2点です。

この動画の目的は、ただ話題になることだったのでしょうか?
視聴者に思わず「県のことをもっと知りたい」「動画で見たこの魅力的な場所をこの目で直接見てみたい」と思わせ、実際に観光をしに来てもらうことが目的だったのではないでしょうか?

知事の言うとおり動画の再生回数は今後増えるでしょう。
しかしそのアクセスのほとんどは「なんだか炎上しているようだからどんな動画か見てみよう」という野次馬的な目で見られるはずです。
それで本当に目的が達成されたと言えるのでしょうか。

「誰かを傷つける表現になっていないか」という思いやりの欠如、「とにかく話題にならなければ」という焦燥感、この2つがそろってしまったとき、広告は炎上するのです。

広告がどうあるべきか、振り返るときが来ている

広告の本来の目的は、商品やサービスを知ってもらい、自分たちのファンを増やすことだったはずです。

この頃、月に一度くらいのペースで企業や自治体が公開したCMが物議を醸しています。
そろそろ一部のユーザーからは「これは炎上狙いではないか」という冷めた目で見られ始めてきたことも確かです。

また、世界的に日本語がわかる人口が少ないからまだ話題になりづらい面がありますが、それでも日本のタレントの衣装がナチスの軍服に似ていたり、著名人がナチスを想起させるようなTシャツを着てテレビに出たことは海外でも話題になりました。
英語圏では「日本人はナチスの問題について認識が鈍感である」と呆れているような記事も出ていますし、ジェンダー・ギャップ指数がG7最下位で女性が活躍しづらい国であることも世界中が知るところです。
「日本人は勤勉で高い技術力を誇り、礼儀正しくて良い人たちである」という今までの海外からのイメージが少しずつ変わってきています。

今、日本のメディアや広告は、国内からも国外からも厳しい目にさらされようとしています。

正しい使い方をすれば人々を明るい気持ちにさせることができ、間違った使い方をすれば不快な気持ちを世界中に広めることができてしまうインターネット。

できる限り、気持ちの良い使い方をしたいものです。
顧客と信頼を築くことは一朝一夕でできることではありません。
それはインターネットでも同じです。
ひと目でたくさんの人を驚かせることができる場合もありますが、多くは工夫を重ね、手間と時間をかけて育むことになります。

「話題にならなければ」と焦ることで、せっかくのプロジェクトも方向性を見失い、チェックがいい加減になり、結果的に多くの人を傷つけることになってしまいかねません。
話題になることはもちろん大事なことですが、それ以上に大事なことはなかったでしょうか。

「誰のための」「何のための」広告をつくろうとしているのか、振り返るときは今です。

参考サイト

●「女性活躍促進」をビジネスの観点から紐解く:広告の観点から:http://leanintokyo.org/femvertising/

●フェミニズムは広告界でもバズワード?フェムバタイジングを考察:https://www.cinra.net/column/201706-feminism

●Femvertising/フェムバタイジング:http://www.newyorker.co.jp/magazine/now/keywords/12532/


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