学校・教育業界の炎上事例
突然ですが、下記の事件をご存知でしょうか?
●モノレールの駅で線路上に侵入し、寝そべりながらタバコを吸った動画が拡散され、威力業務妨害容疑で1人の男が書類送検になった。
●走行中の列車内で居眠りをしていた他人の顔写真を無断で撮影し、「わらいとまんないしぬ」などと投稿。写真を撮られた人の親族が投稿に気づいて警察に相談した結果、該当者の女が1人侮辱罪で書類送検になった。
これらは、インターネット上の悪ふざけでは済まされず、書類送検、逮捕にまで至った「事件」です。容疑者については、あえて「男が」「女が」という書き方をしましたが、実は当時すべて未成年、つまり学生による犯行でした。
また、逮捕とまではなりませんでしたが、アルバイト先の店のことを不適切な言動でSNSに投稿し、ネット炎上に至らせ、アルバイト先の店を閉店にまで追い込んでしまった例もここ数年何件もあります。そして、投稿した学生の所属する学校名がもネット上で公開され、事件の概要とともにセンセーショナルに伝えられてしまう、という事態に陥っています。つまり、学生がほんの遊びのつもりで投稿したものが、アルバイト先の店を潰し、自分の通っている学校名を穢し、自身もネット上に暴かれる、ということにまで発展するのがこのSNSの特徴です。
どうしてこのようなことが起こってしまったのでしょうか。彼らを取り巻く様々な環境が悪かったのか、時代が悪いのか、「これが原因である」と1つに絞ることはできませんが、彼らが「インターネットの怖さ」をよく理解していなかったことが大きな要因の1つであることは確かでしょう。
学生のインターネット利用実態
内閣府は、2016年11~12月に満10~17歳の5000人を対象として実施した「青少年のインターネット利用環境実態調査」によるとインターネット利用率は80.2%とほとんどの学生たちが使っています。
利用機器はスマートフォンが47.2%でトップ。ついで携帯ゲーム機(21.7%)、タブレット(20.9%)、ノートパソコン(17.3%)と続きます。
スマートフォンの保有率は、小学生では2014年の17.1%から、中学生では41.9%から、それぞれ10ポイント近くここ2年で増加しています。高校生になるとスマートフォン保有率は20人中19人と激増しています。
子どもたちにインターネットの怖さについて教育するという取り組みは実は、「情報」という教科で2003年から行われていますが、日々進化するネット社会に学校側は十分対応できているとはいえません。
最近では、誰でも簡単に無料のサービスを利用して個人のホームページやブログを持つことができるようになりました。
その現実に追いつくため、子どもたちにインターネットの怖さについて教育するという取り組みは「情報」という教科という形で2003年から行われるようになりました。
インターネットが少し日常生活に浸透してきたこの頃は、学生たちでも簡単に無料のサービスを利用して個人のホームページやブログを持つことができるようになりました。
子どもたちの世界が良い意味で広がりましたが、一方で「学校裏サイト」と呼ばれる大人の知らないバーチャル空間で行われるいじめなどが問題になるようになりました。
子どもたちの世界もサイトを通して広がりましたが、一方で「学校裏サイト」と呼ばれる大人の知らないバーチャル空間で行われるいじめなどが問題になるようになりました。
今はほぼ1人1台がスマートフォンを持ち歩く時代です。
子どもたちだけの情報も「学校裏サイト」に集約されるのではなく、LINEやTwitter、はたまた大人が知り得ないアプリなどあちこちに分散されています。
今や、子どもたちだけの秘密の場所が、より目に見えにくいバーチャルな世界で無数に存在しているのです。
インターネットは世界中の人に向かって大きく開かれた場所です。
しかし、子どもたちはどれだけ、学校とその人間関係の延長であるLINE(閉じられたコミュニティー)と、TwitterやYoutubeなど(世界中とつながっている大きな場所)の区別がついているのでしょうか?
「情報」が教科として取り入れられた2003年の当時の子どもたちにとっては、パソコンや産まれた頃にはなかった携帯電話にさわること自体が、非日常的な行為でした。
しかし、生まれたときからそこにテクノロジーがあって、毎日肌身離さずスマートフォンを持ち歩く今の子どもたちにとっては、現実の日常生活と変わらない世界がそこにあるのだと勘違いしていても不思議ではありません。
たとえばLINEでの既読無視がいじめにつながることなどが問題視されていますが、これはまだ序の口です。
それよりもここ数年で懸念されているのが、「バカッター」や「バイトテロ」とも言われている悪ふざけをした様子をインターネット上に広く公開してしまうことです。
ネット炎上が学生に与える影響
冒頭の例のように1つの小さな投稿を発端として、本名、住所、通っている学校、塾、部活動、私生活を何でも暴かれて、意図せずして把握しきれないほどたくさんのウェブページにコピー・アンド・ペーストされてしまい、途方に暮れる人たちがたくさんいます。
なぜならば、事件から何年経とうが、テレビ等のマスメディアから消えようが、インターネット上にはすべてが残るからです。
このことがどういう影響を与えるか、おわかりでしょうか。
例えば、ネット上に情報を公開された学生が就活をした場合、近年では企業の採用担当者が応募者の名前を検索にかけることは当たり前のことになってきました。
検索結果、ネットに名前が浮上して学生時代の過ちが目に止まり、不採用となる人も現実にいます。
罪を償ってどれだけ反省しても永遠に罪人であるかのように当時の情報が刻まれ続け、将来に渡って大きな障壁となって立ちはだかるのです。
とは言え、学校にとっても非常に負担になっていることとは思いますが、昔と同じような感覚で、情報の授業で教えたきりで、あとの日常生活は自分で自衛しなさいと放置し、問題が大きくなってから対応が後手に回ってしまってはいけません。
もし仮に生徒が1人、何か過ちを犯してしまったり、トラブルに巻き込まれたことで本名や学校が特定されてしまった場合、当該生徒が人権侵害の被害者になるだけでなく、他の生徒や保護者、学校周辺の地域の人々、今後の入学を検討していた人たちの目にも留まり、ネガティブな感情を抱かせてしまいます。
実際に数々の事件によって当事者が通う学校の名前が不名誉な形で世に広く知られた際に、自分は当事者ではないが、マイナスのイメージで学校名が知れ渡ったことで就職活動に悪影響が出るのではないかと心配する生徒いるようです。
そうならないためには、とにかく問題をいかに早く発見し、なるべく早く事実確認をして、いかに早く事態を適切に収拾できるか、というスピードが必要不可欠です。
学校・教育業界の風評・炎上傾向まとめ
今や学校は、学生や教職員、保護者がソーシャルメディアを利用することを前提にして、常にSNSリスクに晒されている現状を認識する必要があります。
生徒・教職員を守るための対策として、ポイントは以下の3つです。
①学生・教職員・保護者向けのソーシャルメディアガイドライン・マニュアル策定
②Twitterやネット掲示板等の書き込みを定期的に収集し、炎上の芽を早期発見するインターネット監視の導入
③学生・教職員・保護者向けソーシャルメディアリスク教育の実施
私たちはインターネットには世界をより良くすることができる力を持っているも、負の面があることもよく理解しています。
教育関係者の皆様と同様に、インターネットによってもたらされる子どもたちの未来がより良いものになるように、わたしたちも子どもたちの未来を守るお手伝いをさせていただければ幸いです。